彼の演奏スタイルは独特で、特に通常ジャズトロンボーン奏者が使う音域よりさらにオクターブ下まで使い、音色も暖かい。(それは彼の使っている楽器が太管ということも若干起因している。)
彼は若くして同朋のアイアートモレーラやフローラプリムらとアメリカに渡る。
そこでアメリカのジャズシーンの洗礼を浴び、さまざまなセッションに参加し素晴らしい作品を残した。
そののち、彼はアメリカが馴染めずブラジルへと戻ることになる。
その後、ソロアルバムをリリースすることなく表舞台から退くような印象を持ち、下手をすると日本おろかアメリカへも彼が赴くことがないと僕は思い、リオデジャネイロに行った際に彼の演奏している場末のクラブまで足を運び逢いにいった。
一見して人の良さそうな笑顔が印象的な人で、演奏はトロンボーンの他にフリューゲルホルンやテナーサックスを吹いていてびっくりした。
やはり個人的には彼がトロンボーンを吹いているところが一番感動した。
というように、彼の性格も含めアナログ時代に作ったソロアルバムがCD化されることはなかなか難しい。
そんな中で僕の好きな彼の参加作品をば。
-SERGIO MENDES & BOOSA RIO-
これはセルジオメンデス名義の1964年頃の録音。
ここで特筆すべきことはアントニオカルロスジョビンが全曲アレンジしているということと、フロントが2トロンボーンとテナーサックスという一風変わった編成。
しかもトロンボーンはスーザがバルブトロンボーン、もうひとりがスライドトロンボーン。
スーザはスライドのみならず、バルブの名手でもある。というか、おそらくスタートはバルブだっと思われる。
バルブでの彼のアプローチは非常にBopライクなフレージングで、スライドの時のような土臭さがない。
もう一人のトロンボーン奏者も素晴らしい演奏を繰り広げている。
-Sweet Lucy-
1978年録音の彼のソロアルバム。
ジョージデュークプロデュースということもあり、かなりポップでファンキーなサウンドになっている。
これはリアルタイムでアナログ盤を購入して今でも「超」愛聴盤となっている。
これはCD化されていないのが悔やまれる。
とにかく、このアルバムのジョージデュークのプロデュース能力は素晴らしい。
ファンクとブラジルサウンドがこんなに相性がいいものなのかを目の当たりにした。
それ以降、ジョージデュークのソロアルバムでもスーザのソロを聴くことが出来るし、フローラプリムのアルバム「EVERYDAY EVERYNIGHT / FLORA PURIM」
は絶品。
その後、彼はアメリカのミュージックシーンからは遠のいたが最近ではフランスでフランスのミュージシャンとのコラボのアルバムに参加したり、ボサノバ生誕50周年を記念して作られた「Bossa Eterna」をリリースしたり活動が活発化してきているようだ。
このアルバムはジョアンドナートも参加していて実にほのぼのとしたサウンドになっている。
ドナートは優れた作曲家でもあり、彼の作風はシンプルなメロディでサウンドが軽やかという印象を持っていたが、実際、彼と一緒に演奏する機会があったときの彼のピアノのビートの重さ、深さに驚いた。
スーザという人は、自己アピールが苦手というか好きでないというか、そういうタイプの人だと思った。
アメリカに行ったのもアイアートやフローラに肩を押されて一緒に行ったようだし。
彼に逢った頃、彼はストリートチルドレンの世話をしていると人から聞いた。
そんな人なんです、彼は。
だからああいう深い音を出すんです。