過去の彼のアルバムに収録された曲をヴィンスメンドーサのアレンジでオーケストラバックで演奏に徹した作品。
彼ほどの実力、キャリアを持つ人が敢えて他人にアレンジを任せるというのはよほど懐が深いか自分の作った曲に対してオリジナリティの面で自信がよほどあるのだろう。
僕はそのどちらもこの作品を聴いて感じた。
以前のアルバムに収録していた時、シンセやサンプルで補っていたいわゆる「弦楽器」「管楽器」の部分が今回は生の楽器に置き換わっているという感じのアレンジで以前のアレンジと大きく変容を遂げていない。
もちろん、サンプルならではの面白さも前者にはあるし、生になることでより深みを増すという点ではどちらのアレンジも素晴らしいと思う。
今回はさほど大胆なアレンジをヴィンスが施さなかったのはどんな理由か知る由はないが、この作品は非常に気持ちがいい。
これと同じ印象を持つのはパットメセニーグループのサウンド。
このグループも小編成であってもかなり荘厳な見事なオーケストレーションが施されている。
なので彼らの作品を生の「弦楽器」「管楽器」に置き換えてもさほど印象派変わらない。
なかなかジムはフロントに出ることは普段なく、どうしても裏方に回る
役回りを好むような印象を受ける。
彼にプロデュースやアレンジのオファーが集中するのもよくわかる。
(ヴィンスもギルゴールトスタインも)
それは素材を最大限にスケールアップさせる術を知っているからだ。
彼らに共通することは近代クラシックを熟知しているというベーシックがありつつ、今時のリズムのフィギアに柔軟性をもっているということかもしれない。
だからこそ、「リッチなオーケストレーション」=「モサっとしている」にならないのだと思う。
ジムの作品は「ポップ」と「狂気」の見事な共存にあると思う。
でもこの「狂気」は人を不快にさせるものでもなく、小手先のこれ見よがしのスキルを振る舞わすものでもない。
このバランス感覚が絶妙だ。
おそらく作為的なものではなく、彼本来持っている気質のような気がする。
益々、彼のバイオに興味が湧いてきた。