このアルバムに出会ったのは僕が20歳代前半の頃。
その頃から僕は、アレンジャー、クラウスオガーマンの熱狂的なファンで、彼のアレンジした作品を徹底的にコレクトしていた。
当時はまだCDというメディアもなくLPレコードの時代だった。
これは仕事の合間に楽器を抱えながら都内のあらゆる中古レコード屋さんに毎日のように出向いた中で探した一枚。
もう既に新譜ではなく、中古で確か500円前後で買った記憶がある。
このLPレコード盤に針を落としては興奮したことを今のことのように憶えている。
時代はLPからCDに移り、このアルバムは一向にCDとして再発されることなく自分の記憶の中から消えていった。
奇しくも年末に彼の訃報を聞き、知人にこのアルバムのことを聞くと最近CD化されたとのこと。
速攻、CDを購入。
素晴らしい、なにもかもが。
当時はオガーマンのアレンジにしか興味がいかなかったが、今聞くとフレディの色気のあるフレージング、サイドメンの演奏の素晴らしさが際立つ。
79年という自分にとって大好物なミュージックシーンの香りがプンプン漂う。
リズムセクションのサウンドがざらついているのだ。
それはフランクザッパバンドに在籍していたチェスタートンプソンのドラムがよりそうさせているのだと思う。
過度なプラグインの弊害にも侵されず、演奏のねじれがそのままここには記録されている。
オガーマンのストリングスはいつものように優雅だし、チックコリアはまさに「Return to forever」のアナログシンセの音だし、アコースティックピアノは非常にジェントルで若々しく清い。
これらの曲全てに映像が思い浮かぶ。
それほどドラマチックだ。
今時、収録曲が5曲しかなく、それぞれが7〜10分の長尺なのに全く飽きない曲、演奏なんて信じられない。
フレディはジャズトランペット奏者として第一人者であることは間違いない。
ただ、その少し前にマイルスがいた為にどうしてもそれが彼の過小評価に繋がったのかもしれない。
VSOPの活動中に、この手のアルバムを作ることは当時のジャズファンから歓迎されなかった節さえある。
しかし、29年後にあらためて聞いてもこんな素晴らしい全方位型のトランペット奏者のアルバムはないと思う。
もちろん、メインストリームでの「Body & Soul」などの彼のリーダーアルバムもこれと同じくらいフェヴァリットなアルバムでもある。