Bob Brookmeyerはジャズバルブトロンボーンの名手としては周知の事実だが、作編曲の才能はそれを凌ぐと私は常日頃思っている。
ここ数年、彼の作編曲による大編成でのレコーディグでのクオリティがそれを証明しているといえよう。
そこで今回特筆すべきひとつはメトロポールオーケストラの演奏の素晴らしさ。
メトロポールオーケストラはオランダの世界でも比類なきプロによるポップスとジャズを演奏するオーケストラ。
いわゆるフルストリングセクション、木管、ジャズビッグバンドを含む大編成なポップスオーケストラ。
海外のミュージシャンとのコラボレーションも非常に多く、共演者として、エルビスコステロ、ディジーガレスピー、ハービーハンコック、チャカカーン、サラボーン、ディオンヌワーウィックと挙げたらキリがないほど色んなジャンルのアーティストがいる。
近年、個人的に感動したのはパットメセニーとの競演。
全編、パットメセニーグループでのレパートリーをこのオーケストラ用にアレンジして
行われたコンサート。
本来の彼のグループでの印象を損ねる事なく、初めからこのオーケストラとのジョイントの為に作曲したのではないかと疑うくらいアレンジと演奏がマッチしている。
それはアレンジャーの存在が非常に大きい。
毎回、コンセプトによって様々なアレンジャーを招いているが、ヴィンスメンドーサやマリアシュナイダーなどはここの常連だ。
先日、イヴァンリンスが聴かせてくれたのも、まだ未発表のメトロポールオーケストラとの競演で全編、イヴァンのオリジナルでアレンジは確かマリアシュナイダーだと記憶する。
イヴァンのその作品も素晴らしかった!!
当然そこでイヴァンとこのオーケストラやアレンジ、そしてレコーディングの成り立ちについての話になるが、とにかくプロダクトが素晴らしいようだ。
この編成でポップスやジャズを演奏するような催しはないわけではないが、レギュラーでパーマネントなこういうようなオーケストラは残念ながら日本にはないので、常に寄せ集めのメンバーによる演奏になる。
ポップスでフルオーケストラを使いたい場合、基本はクラシックオーケストラがいて、リード(この場合、首席とは言わない。)トランペットやリードトロンボーン、それにサックスセクション、リズムセクションをスタジオミュージシャンでさす(投入する)ことが殆どだ。
これは仕方のないことだと思うし、それはそれの良さはあるはずだがパーマネントであるが為の「重さ」や「安定感」はなかなかこのメトロポールオーケストラのようには出ない。
これではクラシックオーケストラの個々の本来のオーケストラの個性は出ないのも無理はない。
肝心の本作であるが、素晴らしいです。
フルオーケストラとストリングスカルテットの対比も素晴らしく、Bob Brookmeyerの書くジャジーな部分もクラシカルなスコアも見事にオーケストラは違和感なく表現している。
間違いなく、メトロポールオーケストラの一連の作品は全てクリエイティビティが高く、後世まで残るものだと思う。