2010年07月26日

TANGENCE/J.J.Johnson

かつて僕は1回だけJ.Jに会ったことがある。それはJazz専門誌のインタビュアーとして1時間ほど彼の滞在先のホテルの部屋でのこと。
あまりイメージ出来ないかも知れないが、私が20代後半になってあまりトロンボーン奏者の演奏に興味が無くなっていた中ででも常に聞いてたのは彼やロソリーノだった。J.Jは作編曲にも長けていた為に、彼が書いたビッグバンドのスコアを採譜したりもしていた。

実は最初、彼の来日に合わせてインタビューを出版社がしたところ、断られることになる。それは彼の愛妻Vivianがその直前に亡くなれたためによる傷心、落ち込みでインタビューどころではなかったということだったらしい。そして翌年になり2度目の依頼でインタビューが実現した。

彼といろんな話をしていて僕が感じた彼の印象は「頑固で意地っ張りで傷つきやすく、繊細」だった。

いわゆるスタジオ録音での作品の中での彼のキャラクターとしては実にクールで如才ないというイメージだが過去のライブ音源を聞くととても熱い演奏を繰り広げていて、スタジオ盤しか聞かないと彼のキャラクターを勘違いしてしまうかもしれない。

彼の作品は彼の妻が亡くなった後に発表された妻の名前をタイトルにした「Vivian」で大きく変わった。それはいわゆるテクニックごり押しではなく、フレーズは抑制されている。が、それがかえって非常に情緒の豊かなトロンボーンになっている。

その後に発表されたのが、この「TANGENCE」。これはロバートファーノンというイギリスの映画音楽作曲家のアレンジでストリングスを含むオーケストラをバックにして比較的ゆっくりな曲調のものを取り上げている。

正直言って、この作品は最近まで自分の愛聴盤ではなく、僕にとっての彼の作品における愛聴盤はスマートでエネルギーに満ち満ちていた頃のコロンビア時代のスモールコンボのものが中心だった。

しかし今日、たまたまi-Tunesでシャッフルしている中、この作品の曲を耳にして、耳が釘づけになった。それはかなりの衝撃だった。J.Jの音が重くて切ないのだ。これは明らかに、作品ではなく聞く側の自分側が変容したということだ。これは、嗜好が変わったのではなく、自分の精神的内面が部分が色んな経験を経て変容したのだと実感した。この音源を再び聞くことが出来て本当にラッキーだった。

このJ.Jのサウンドの重さ、切なさは彼がソリストを努めたビリーホリディの「LADY IN SATIN」でのビリーホリディの歌唱を聞いた時の印象と同じだ。



ロバートファーノンの編曲も素晴らしい。

こういう演奏はたとえJ.Jといえども彼が30、40代では出来なかったと思う。やはり生き様が演奏に反映されるのだと思った。

自分がストレートジャズのアルバムを作らない理由はそこにあり、もしもスタンダード曲中心のアルバムを作るとしたら40代後半か50歳過ぎてからと自分が20代の頃から決めている。



posted by YM at 14:10| 東京 ☀| レコメンド | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。