2012年03月22日

セロニアスモンクのラージアンサンブルもの2枚

セロニアスモンクは誰もが認めるユニークでオリジナリティ溢れる希有なジャズピアニストであり作曲家ということは改めて言うまででもありません。
彼の作曲した曲は実に個性的で彼以外のどんなミュージシャンがどんな形態でどんなアレンジで演奏しようとも「モンク」っぽくなります。なので彼の曲はスタイリッシュという表層的な次元ではなくもっと根幹的な部分で個性を出しているように感じます。彼の日頃の演奏と曲は密接的な関係にあると思います。

モンクは沢山の傑作を世に出していますが、個人的には彼のソロ(独奏)作品が大好きです。それは純度100%モンクだからです。実際、他のジャズピアニストよりもソロ作品が多いのは本人の意識によるものも大きかったのではないでしょうか?もちろんピアノトリオやフロントに1〜3人の管楽器を配する編成でも十分彼の演奏、楽曲の「旨味」を出すには十分だったのだと思います。

モンクのアルバム作品を見た時に、2枚だけラージアンサンブル(大編成)ものがあります。これはちょっと他の作品とテイスト、コンセプトが違うのでなかなか彼の代表作として取り上げることはないのですが、別の角度から、つまりモンク本人が演奏する「モンクの作品集」として着眼するととても興味深い作品だと思います。

その作品とは「The Thelonious Monk Orchestra ar Town Hall」と「Monk's Blues」です。

「The Thelonious Monk Orchestra ar Town Hall」はタイトル通り1959年タウンホールでのライブレコーディングです。チューバやフレンチホルンを配した、ギルエヴァンスオーケストラを想起される編成です。2年前の1957年にギルは「Gil Evans and Ten」というアルバムを作っていますが、タウンホールの編成のアイディアに関してはこのアルバムの影響がないとは言えないと思います。しかしながら実際のサウンドはギルのサウンドとはかなり異なります。本作でのアレンジはピアニスト、Hall Overtonによるものですが、察するにモンクやレーベルプロデューサーからの(ビッグバンドではないユニークな)編成の発注があり、それを、あまりチューバやホルンといったジャズではあまり馴染みのない楽器を使いこなせなかった、若しくは自由にアレンジを書かせてもらえなかった事情があったのではなかったのでしょうか?とはいえモンクのフレーズを管楽器群にトランスクリブした「Little Rootie Tootie」
でのソリは圧巻です。当時、アンコールでも再び本編で演奏したこの曲を演奏したということを見ても、この曲がこのコンサートに於けるハイライトだったということが言うまでもありません。




そしてもう1枚は「Monk's Blues」は1968年スタジオ録音。こちらはレギュラーサイズのビッグバンド編成です。アレンジはオリバーネルソン。いわゆるアレンジャーとしてのプロ中のプロです。本作でも彼のペンが冴え渡っています。アンサンブル要員として若きアーニーワッツ、トムスコットもいて興味深いです。オリバーネルソンのペンの特徴はコンテンポラリーで緻密でありながらとてもキャッチーでポップ(難しく聞こえない)だと思っています。本作はマイルスデイヴィスと「Sketches of Spain」「Pogy and Bess」「Kind of Blue」等のヒット作でタッグを組んでいたテオマセロがプロデューサーとして関わっているので、本作の制作に於いて、モンクのユニークさと「ポップ」感を出す為にアレンジャーをオリバーネルソンを配したのもテオのアイディアだと思います。マイルスがあれほど「アーティスト」として評価されたのも常にテオのプロデューシングや編集のアイディア、テクニックがあったからこそというもの今となっては周知の事実です。本作の裏ジャケットにはテオ、オリバーネルソン、モンクの3ショットのスナップが掲載されているほどテオの存在は大きいのだと思います。
本作はモンクとバンドのコントラストがとても面白いです。ある意味においてそれらは「水と油」で溶け合うことはないけれど、その分離が実にモンクというアーティストを象徴しているようでもあります。タウンホールよりも一層モンクのソロアルバムではなく、モンク本人演奏によるモンク作品集という印象を強く持ちました。

要約すると、本作は確固たるサウンドを持っているモンクに対してスコアの緻密さを得意とするオリバーネルソンがモンクのサウンドの余白を目一杯、音符で構築しているというモンクとオリバーネルソンの対比のドキュメントではないでしょうか?



この2枚、前者は東海岸ニューヨーク、後者は西海岸ロスアンジェルスでの録音なので風土、文化圏の違い、ミュージシャンの違いをハッキリ見ることができるという点でも比較するには面白いと思いました。

いわゆるうるさ型(音楽的感性が優れているという意味ではなく、ミュージシャンデータベースが豊富にありそれを独自に考察する人のこと)にとって、「Monk's Blue」はチャラくて薄い音楽だと思われる方もいるかと思いますが、今回の記述でも分りますが私個人的には大好きな1枚です。構築していくやり方もジャズの1つの方法だと思いますので。

余談ですが、モンクの代表曲「Blue Monk」にひっかけて付けられた「Monk's Blue」というアルバムのタイトルは安直ではありますが、モンク自身はこのレコーディングを楽しめていたかどうかは分らず知る由もないので、もしかしたら彼の心情も込めて付けられたタイトルだとしたら更にペーソスの効いた作品ですね。

posted by YM at 23:00| 東京 ☀| レコメンド | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする