村田陽一(tb,b-tb,eup)
西村浩二(tp,flh)荒木敏夫(tp,flh)
佐藤潔(tuba)
山本拓夫(piccolo,fl,b-cl,ts,bs)竹野昌邦(as,ts)本田雅人(ss,as)小池修(ss,as,ts)
村上"ポンタ"秀一(ds)
マイケル・ブレッカー(ts)
渡辺貞夫(as)
この頃、もっともジャコパストリアスを聞いていた時期で、それがこのアルバムの選曲に反映されている。
1.Be Bop ~ What's The Matter?
いわゆる本編の前に早いリフをくっつけるという前二作と同じコンセプト。
Be Bopはディジーガレスピーの曲。
What's The Matter?は僕のオリジナル。
この曲はいわゆるダブル(ポップスではよくやる手法だが、同じパートをもう一度レコーディングすること)にしている為に、いままでのアルバムよりポップ感が出ている。
この曲は是非、竹野君にテナーでなくアルトサックスでソロを吹いて欲しいが為に書いた曲。
前半が竹野君のエモーショナルなソロ、そののちに一旦クールダウンし盛り上がるようなアレンジになっている。
2.Teen Town
言わずと知れたジャコのオリジナル。
ウェザーリポートでの演奏が有名。
とにかくリフが難しい。
拓夫君のピッコロ、バスクラ、僕のユーフォニアムでリフ(メロディ)を吹いている。
とはいってもこのリフのダビングは1時間程度で終わったような気がする。
ソロは拓夫君のバスクラと、小池さんのソプラノサックス、それと僕のユーフォニアム。ユーフォニアムでのアドリブソロデビューとなる。
この曲はピッコロとバスクラが同時に鳴っていて欲しい為、基本的にライブではあまり取り上げられてない。
3.Sapping Turtle
変拍子がいろんな処にトラップのように施されているベースがキャッチーな曲。
上にのるリフはいわゆるクローズドボイシングの緻密系なハモリになっている。
途中でスウィングになり、西村君のソロになり、それを引き継ぎサックスソリが続く。
このソリは個人的に気に入っている。
このタイトさはトランペットの西村君、荒木さんあってのサウンド。
4.The Ponta March
これはシャレの曲。
ポンタさんがトランペット。
他の管楽器のメンバーがマーチングドラムを演奏。
この曲が一番レコーディングで盛り上がった。(笑)
5.Acute Angeles
あ、これも凄い変拍子だ。(笑)
でも確か、この曲を作曲するのに30分もかからなかったような気がする。
今聴くとかなり斬新なことやってます。
これニューオリンズブラスバンドの編成だよね?
和声も結構、凝っていて、リズムのモジュレーション関係も充実している曲。
これ全然ライブでやってないけど、やってみよう是非。
6.Three Views Of A Secret
この曲もジャコの曲。
そしてマイケルブレッカーを迎えてのトラック。
何故、ジャコバンドに在籍していたボブミンツァーではなくマイケルに
オファーしたか。
それはジャコの自伝やジャコのバースディライブの音源から思いついた。
このバースディライブの時はミンツァーとマイケルのフロント2テナーで、この曲をマイケルがフューチャーされていたのだ。
ジャコの自伝によると、このライブの翌日からマイケルは薬物依存症を治す為に入院する事となる。
その鬼気迫った彼の演奏と、その後完全にクリーンになりソロアルバムも出し、スタジオミュージシャンからジャズアーティストへと変貌した彼の演奏を「おなじ」楽曲で一ファンとして聴きたかったから。
レコーディングディレクターと二人でニューヨークへ飛び、マイケルにソロをダビングしてもらった。
当たり前だけど、ジャコの時のそれとは違った演奏だった。
非常にフレンドリーな人で、これを機にメールでのやりとりや来日の際に会う機会に恵まれた。
彼が逝去して1年が経つ。
明らかに早すぎる別れだった。
しかし、彼の遺したものは「永遠」だ。
その彼の遺していった財産の中に、僕が関わった作品もあることを誇りに思う。
7.Bring Back
曲の出だしのフレーズだけよく取り出されてTV番組の「アタック」として使われている。
個人的にはサビからの転調を繰り返すフレーズ、和音が気に入っている。
もうこの頃になると、この編成での有効なアレンジ法もわかってきたのでむやみに「音」を詰め込まなくなった。
つまり引き算が出来るようになったということ。
なので最初の頃のアレンジより、一人一人の負担が軽くなってきたはず。特に低音を担当するバリトンサックスとチューバはユニゾンではなく組み合わせで一つのラインを作るような方法も出来るようになった。
ここでのマイケルのソロも素晴らしい。
8.A High Old Time
前半はポンタさんのドラムはお休み。
そのかわりメトロノームにお手伝い願いました。
ある意味、このスカスカ感は引き算が出来るようになった証でもあります。
珍しくヘソありのハーマンミュートでソロを吹いてます。
荒木さんのソロも味があって素晴らしい。
とかなんとかいっておきながら、最後にハイパーなTutti(コルトレーンチェンジというかなりコンテンポラリーなコード進行を使ったもの)があって、再びニューオリンズ的なサウンドに戻る。
曲の最初の音量、ボルテージと最後を是非聴き比べてください。
かなりの「差」があるので。
最近の傾向として、こういった1曲を通して音量の変化というのはポップスを含めて、どんどん稀有になっているのがよくわかります。
9.Come Sunday
デュークエリントンの曲。
教会の礼拝が毎週日曜にあって、「早く教会へ行く日曜が来ないかなぁ」という割とシビアな意味合いを持つバラード。
ここでのソロは渡辺貞夫さん。
この時期、貞夫さんのビッグバンドのアレンジや演奏をさせていただいており公私ともにお世話になり現在に至ってます。
僕が高校生の頃に、地元静岡の市民会館で貞夫さんのコンサートがあり、終演後にLPとサインペンを持って楽屋裏で待っていたことが最近の事のようです。
その10数年後に、こういった形で貞夫さんと音楽が出来る事を誇りに思ってます。
貞夫さんと同じステージに立つ度に、強力なエネルギーを頂きます。
普段、貞夫さんが喋ってる行為と演奏している行為が全く同じレベルで
、つまり境目がないのです。
全部、貞夫さんワールドです。
だからどんなリズムのフォーマット、音楽のジャンルでも何の違和感もなく、そこに貞夫ワールドが溶けていくのです。
これ、凄い事です。
シンプルなメロディこそが貞夫さんの素晴らしさが、発揮されると思いこの曲を選ばせていただきました。
この曲は管楽器だけの編成で、レコーディングはわざと貞夫さんを囲むように僕らが円形になって行われました。
10.Port To Port
1人多重トロンボーンアンサンブルです。
ハーモニーのロングトーンはすべてバケットミュートという、昔ダンスバンドなんかで使われたミュートで、今は一般的ではないのですが、こういう使い方をするのも面白いです。
この手の曲、アレンジは30分程度で済んでしまいます。
レコーディング自体も10数パートあるけども、大体2時間ぐらいで終了です。
逆にいうと2時間吹きっぱなしってことなのですが。
こうやって久しぶりにこのアルバムを聴くと、この中の曲をまたライブでやってみたいと思いました。