スタイルとしては古いんですわ。大元は、トミー・ドーシーという人がすごく有名。1950年代、ダンスバンドの全盛期。社交ダンスが新しかった頃。ダンス音楽に求められるのは、とにかく人々がダンスができることだった。音楽うんぬんでなく、踊れればよし。そんな踊るための音楽から、ちゃんと鑑賞する音楽へという流れで出てきたのが、ビーバップね。トミー・ドーシーという人は、スイートサウンドのトロンボーンを確立した人。トミー・ドーシー楽団の専属歌手にはフランク・シナトラがいた。シナトラの歌い方はトミー・ドーシーの吹き方そっくりなんだよね。トミー・ドーシーは8小節でブレスをとるところを32小節トロンボーンを吹いてブレスをとる。シナトラもそういう歌い方するでしょ。
そんなトミー・ドーシーの演奏スタイルを継承したのが、アービー・グリーンというわけ。ある意味サウンドが白人的というか、明るい。よどんでいない。比較対象として面白いのが、このメルマガでも以前紹介した、ビリー・ホリデイの"Lady in Satin"。このアルバムでは、今回紹介した二人、J.J.JOHNSONとURBIE GREENがトロンボーンを演奏しているんだ。ふたりの演奏スタイルに興味のある人は、このアルバムをもう一度聴いて比べてみると面白いよ。
近年どんどん、トロンボーン奏者は技巧派(細かく、早く吹くテクニック)に偏重するきらいがあって、こういうスイートスタイルの演奏をできる人がいなくなってしまっている。それは、時代のニーズがないこととも関連しているけど、すごく残念だよ。自分はスイートものもやりたいし、そういう演奏ができるシチュエーションを作ろうとしている。人のプロデュースする時に、スイートなスタイルがはまる場合はやるようにしたりね。
このアルバムは、20本のトロンボーンバックで、アービー・グリーンがずっとソロを吹いている。トロンボーンがこれだけ集まってもすごい柔らかいサウンド。トロンボーンのアンサンブルの柔らかさが出ているアルバムです。おすすめ。見つけたら即買い、ね。