2008年03月28日

EVERYDAY EVERYNIGHT / FLORA PURIM

トロンボーンの魅力を語る上で外せないのが、なんと言ってもブラジルサウンドの中のトロンボーン!ブラジル音楽の名盤とされるアルバムの中には、トロンボーンの演奏が多いんだよね。ブラジル音楽では、サックスなどよりも、トロンボーンやフルートのソロの方が割合的に多い。それだけ、ブラジルのサウンドにトロンボーンというのははまりがよいってことなんだ。なぜかというと、歴史的なものも関係している。ブラジルの古典的なインスト音楽で、ショーロっていうジャンルがあるんだけど、そのジャンルの中ではトロンボーンやフルートにものすごいニーズがあった。ブラジルにおいては、それだけポピュラーな楽器なのね。

有名どころでアントニオ・カルロス・ジョビンなんかも、アルバムでトロンボーンを多用してる。この演奏は、アービー・グリーンがほとんどやっているんだけどね。ブラジルでレコーディングするのならブラジル人プレイヤーを使うはずだけど、あえてアービー・グリーン。なぜか?細かな演奏より、メロディアスな演奏が必要だった。レコーディングをブラジルでなく、NYやLAでやっていたから。その頃ボサノヴァを作っていた人達は、サンバとアメリカのジャズをミックスして、ボサノヴァを作った。つまりアメリカの方を向いていた人達が多かった。・・などなど、そんないろいろな理由があるから、アービー・グリーンが起用されていたんだと思うんだけれども。

このアルバムのトロンボーン奏者、RAUL DE SOUZAも、アメリカに移住したし。フローラ・プリムや旦那のアイアート・モレイラなんかも一緒にアメリカに出てきた。スーザは、その時期にアメリカで自分のアルバムも出している。

ブラジル人のトロンボーンって、音が柔らかくて、高い音をあまり多用しない。中低音を生かした、ヒステリックでない感じの音なんだ。ブラジル人しか出せないような、あったかい、ぼくとつとした感じというのがあって好き。テクニカル派と比べると、ヒステリックでない。そして、抜群にリズム感がいい。

スーザは、70年代後半にメジャーになって以降、表立って外で活動はしてない。ブラジルにひっこんじゃって、今はアメリカとも縁ないし、CDも作っていないんだ。6年前ぐらいに、スーザに会いに、リオデジャネイロに行ったの。将来、彼が日本やアメリカに来ることはないとわかっていたからね。彼に会うなら自分から行くしかないって思って。ちっちゃいクラブで演奏やってるのを新聞で調べて、行ったよ。場末のパブみたいなところでやっていた。年はとっているけど演奏はそのまんまで。ポピュラリティを求めるよりは、もっとプライベートな感じ。商売っけなんてまったくないの。
行ってよかったなぁ、と思う。
どうしても会いたい人がいる場合、待っていてもダメだから、やっぱり自分から動かなきゃダメなんだよね。

彼もすごいジャズが好きでジャズがやりたくてって人なんだよね。ラウル・デ・スーザも、フレッド・ウェズリーもそうだけど、彼らのアイドルはJJジョンソン。スーザは自分のソロアルバムでJJにホーンのアレンジを頼んだりしてる。スーザのソロアルバムはいっぱいおすすめあるけれど、CD化されていない。ので、中でも、彼のエッセンスがいっぱいつまっているこのアルバムをおすすめします。


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Full Circle From Be Bop To Hip Hop / Fred Wesley

ファンク系トロンボーンといった場合、フレッド・ウェズリーが創始者ですね。彼がファンク系トロンボーンを作ったと言いきってよし。ジェームズ・ブラウンをファンクの創始者とするならば、彼のバンドの初代トロンボーンはフレッドだからね。JBがファンクのすべてを作り上げたわけではなく、JBのバンドの連中みんながファンクというものを作り上げた。その中でもフレッドはバンドマスターだから、彼の功績は大きい。

技巧派ではない。テクニカルという面よりはもっと違う部分が大きい。ファンクっていうのは、基本的に、1つのリズムパターンを延々とやって、そのグルーブを楽しむもの。和音も細かく動くのでなく、1コードでやって、リフレインしていくことでできていく音楽。インプロビゼーション−即興的な要素−がまったくないジャンルなので、トロンボーンのソロも、即興でなく、よりメロディアスでリズミックなアプローチになるの。


表面的にはテクニカルじゃない分、誰でも吹けると思いがちなんだけど、実は全然そうじゃない。リズム感や音の選び方がものすごく大切になってくるから。若い子達が真似しても、フレーズは真似できるんだけど、“置く場所”・・・吹くタイミングとかリズムのとり方っていうすごく大切なところができない。そこをもっとやった方がいいよね。僕も彼と一緒に演奏してそばで感じたから、そいういうことがよく分かる。彼の演奏スタイルは、テクニカルじゃない分、トロンボーンの特性を生かしたフレージングなの。グリッサンドの多用。ポルタメントの多用。音のつなぎが短い。

ある意味、テクニック至上主義ということに関しては、脱トロンボーンサウンドという方向に向かっていきやすいのね。元々トロンボーンというのは早いパッセージをやることに対しては、非機能的な楽器だから。トロンボーンがうまくなりたいと思えば思うほど、従来のトロンボーンではできなかったことをやっていきたくなってしまうもの。でも、自分は、技術偏重にならずに、フレッド・ウェズリーみたいに、「トロンボーンをトロンボーンらしく演奏していく」ということをもっともっと追求していきたいと思う。若い子にも聴きやすいアルバムだと思うので、ぜひ聴いてみてほしい。フレッド・ウェズリーは、最近クラブシーンでよくかかって、ちょっと流行ったりしたから聴きやすいと思うしね。


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Volume 2 - Remaster / Miles Davis

これは参加メンバーもJ.J.Johnson "Eminent J.J.Johnson vol2,"と一緒で、同時期に録音されたもの。

"Eminent…"はJJの名盤としても有名だけど、若くして亡くなった天才トランペッター、クリフォード・ブラウンが参加していることでも有名なアルバム。
JJの"Eminent…"にはクリフォード・ブラウンが参加している。それと同じようなスタイルで、マイルスの"Volume 2"には、JJが参加しているの。
似たようなコンセプト、似たような音楽のスタイルで作られているから、クリフォード・ブラウンとやっているJJ,マイルスとやっているJJという二つの演奏スタイルを聞き比べると面白いでしょう。

Eminent J.J. Johnson Vol 2, / J.J. Johnson
JJの"Eminent…"にはクリフォード・ブラウンが参加している。それと同じようなスタイルで、マイルスの"Volume 2"には、JJが参加しているの。




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Nightwalker / Gino Vannelli

"Night Walker"は、1曲めの前に、夜の雑踏をSEで入れたりと、かなりムーディなんだよね。当時は新しかった。
この"Night Walker"が、自分にとって、ジノ・ヴァネリ初体験だったんだ。20年ぐらい前かな。NYっぽい感じがしたね。ジノの何が好きって、歌も演奏もアレンジも大げさなところ。大げさ=ドラマチック、ということで、いい意味の大げさ具合が好きです。



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The Brasil Project / Toots Theilemans

映画のサントラから、クインシー・ジョーンズから、ポイントとなるところでハーモニカを吹くのはこの人だけ。トゥーツはハーモニカ。
ジャズなどではマイノリティな楽器なのに、演奏する人によってこんなに華麗になるのか、とただただ驚かされる。
アコーディオンもハーモニカも、耳の聞こえ方に似ている部分があって、どちらも癒される感じだね。
リチャードの"Spleen"は、音がブラジルっぽい。
トゥーツの"The Brazil Project"は、ボサノヴァやサンバなどのブラジルのスター達を一同に集めて、彼らの曲を取り上げてやっている。
音がブラジルっぽい・楽器の聴こえ方が似ているというのが、この2枚のアルバムの共通点。
どっちかが好きなら、きっとどっちかも好きでしょう。




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Vince Mendoza / Vince Mendoza

Vinceは、アレンジャーです。Jim Beardもキーボードプレイヤーだけど、プロデューサーでもある。
ミュージシャンはどれだけオリジナリティを持てるか、ですが、ヴィンスは、当時すごく著名なジャズミュージシャンの後ろ盾で、数枚上質なアルバムを作っている。
編成がすごく変わっていて、フレンチホルン4本いれてみたり、すごく聴きやすいんだけど、複雑なことをやっている。
というわけで、Jim BeardとVince Mendozaの共通点は、すごくシンプルに聴こえる、けれど、すごくこだわった音作り、ということです。
作品としてはそれほどキャッチーではないけれど、僕は好き。わかる人にはわかる。




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White Trash / Edgar Winter

以前、東京ブルーノートにハイラム・ブロックがライブの為に来ていて、そのときウィル・リーから吹きにおいでよって連絡があったので行ってみたら、たまたまそこにエドガー・ウィンターが居たんだよね。

 ウィル・リーとは自分のアルバムやこの前のポンタさんのアルバムでもやってもらったりしてたんで付き合いがあったんだけど、エドガー・ウィンターの事はあまり良く知らなくて。
実際一緒にプレーしてみるとね、サックスはもちろん彼はキーボードプレーヤーでもあるんだけど良かったんだよね。ふつうソロで前に出る時はショルダーキーボードを使ってやるんだけど、ブルーノートの3歩ぐらいしか歩けないステージで普通の大きなキーボードを抱えてソロを弾きまくってたんだ。すごく素敵な人だったよ。コーラスというか彼の声も良かったなぁ。

 せっかく出会えたわけだから彼のアルバムを聴いてみようと思ってこのアルバムをなんとなく選んでみたんだけど…とにかくこのアルバムは何をとってもイイ感じなんだよ。サックスもキーボードも歌もね。すごく丁寧に作ってあってサウンドもいいんだ。きっと何度も何度もリハーサルをして何度も録り直してある感じでとても好感がもてるんだ。
いわゆるB面的な曲なんてなくてどれも好きだな。バックのミュージシャン達や色々な背景を調べてみたらもっと面白いだろうね。ギターで参加してる兄のジョニー・ウィンターのソロのアルバムにもずっと参加してるしね。

いつも自分の中の目標としては、憧れている人とやりたいと思うし、その為に色々と勉強しているんだけど、そんな流れの中で今回友達のつながりから、エドガー・ウィンターと知り合えたし、このアルバムにも出会えたという訳なんだ。とにかく思ってたような音で良かったからエドガー・ウィンターのアルバムは全部集めてみようかなって思ってるんだ。



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IN THE SUN / Jane Monheit

 いわゆる世間では美人ジャズボーカリストと言われていて、少し前にネオクラシック的なものが流行ってた中で、サラ・ブライトマンとかきれいなオペラの人と、すごく色気たっぷりのヴォーカリストがいる中で、彼女はその中間的な存在でとにかく歌がうまいんですよ。僕はもともとジャズヴォーカルが好きではなくて、すごく変にフェイクしたりテクニカルなだけの人が苦手だったんだ。でも彼女は素直にストレートに歌っていて僕も素直に聴けて、いいなぁって思ったんだ。

特にこのアルバムで良かったのは、イバン・リンスが参加しているところなんだ。
彼はブラジルの有名なコンポーザーで、もちろん彼自身も歌を歌ってはいるけどクインシー・ジョーンズなんかから見出された人で、彼の書いた曲はジョージ・ベンソンやパティ・オースティンとか 色んな人がカバーしていてグラミーを取ってたりする。とにかくすごくいい曲を書く人なんだ。

イバン・リンスはものすごくあこがれているというか、尊敬しているコンポーザーで3年ぐらい前なんだけど彼がライブで日本に滞在中、アポを取って昼間の空いてる時にレコーディングをお願いしたんだ。その時すごく気に入ってくれて、その日の夜に楽器を持って来いって言われて一緒にライブをやったんだよ。その1年後にもブルーノートでやるから楽器を持って来いって呼ばれて・・・そんな付き合いなんだ。
そういえば2年前ぐらいかなぁ?彼のトリビュートアルバムが出たんだよ。まだ生きているのにね。それだけアーティストに影響力があるんだよね。

彼が曲を提供している3曲目もいいし、バックのミュージシャンもいい。このアルバムはデビューしてから3枚目なんだけど(CDジャケットを手にしながら)歌も良いしルックスも良いし…あっ!このアルバムってアバタースタジオで録ったんだ。しかも、エンジニアはジム・アンダーソンだ。彼はPONTA BOXや佐山さん(佐山雅弘氏)のソロの時にやってもらったエンジニアでね…どーりで音がいいもんね〜!

このアルバムでバックを固めてるミュージシャンのドン・アライアス(per)も自分のアルバムで参加してもらってるし、とにかくこのアルバムは聴き所満載でビンス・メンドーサのオーケストラアレンジもすごくいいんだよ。



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Both Sides Now / Joni Mitchell

このアルバムは、ある意味で彼女らしくない1枚なんだ。全編普通のジャズというか、癖無く自然に歌ってるんだよね。
 ジョニ・ミッチェルだと思わずに聴いてみてほしい。今のありのままをそのまま出している感じで何も気負ってないのがすごく伝わってくる。

 参加してるメンバー達もジャズでいうところの豪華なミュージシャンばかりで、歌のレコーディングではなかなか来てくれない人達なんだ。
 今まで彼女が出してきたアルバムは、アメリカンフォークをベースにして彼女独特の世界観を表現したものが多かったんだけど、今回は彼女の娘に捧げてるせいかすごく優しいものになっている感じがする。

 彼女は絵を描くアーティストでもあって個展も開いたりしてるんだけど、このジャケットの絵も全部自分で書いているんだよ。
 とにかく僕はビンス・メンドーサのオーケストラアレンジが聴いてみたくてこのアルバムを買ってみたんだけどね。普通は6・4・2・2(ファースト・ヴァイオリン セカンド・ヴァイオリン ヴィオラ チェロがそれぞれの数だけいるストリングスの編成)でレコーディングするとまぁ満足って感じなんだけど、彼ぐらいのアレンジャーになってくるとこの3倍の人数を使うんだよね。それが楽しみでさっ!実際すごく良かったけどね(笑)

 ジョニ・ミッチェルがシンガーソングライターとしてではなく一人のシンガーとしての側面が見えてくるアルバムなんじゃないかな?


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UNITY / Larry Young

オルガンって足でペダルを踏んでベースラインが弾けるでしょう?だからこのアルバムはベーシストが参加していないけど成立してるんです。

このアルバムを聴けば一目瞭然なんだけど、前にも紹介したブレッカー・ブラザーズにそっくりなんだよね。ていうかその逆(笑)。ホーンの和音の積みかたが特にそう。もともとこのアルバムに参加しているジョー・ヘンダーソン(ts)やウディ・ショウ(tp)の演奏の影響をブレッカー兄弟は受けているしね。

特にマイケル・ブレッカー(弟)のソロアルバムではベースのいない同じ編成で演奏していてかなりこのアルバムを意識していることがわかります。

まぁそれだけラリーが作り出した音というのがすばらしく影響力があったわけですよ。

とにかくエルヴィン・ジョーンズとラリー・ヤングだけでも成立してしまうような音の上に今は亡きウディ・ショウとジョー・ヘンダーソンの力強いフロントの絡みを聴いて欲しいね。


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2008年03月27日

裸の王様 / JAGATARA

僕が在籍していたバンド、じゃがたらのアルバム。じゃがたらは80年ぐらいからインディーズシーンで活動を始めていて僕が入ったのは80年代半ばくらい。当時はインディーズというのがまだポピュラーでないというか、インディーズ=アングラというイメージがあった。その中で『裸の王様』はインディーズとしては異例にものすごく売れた記録を持っていて、リリースした時はもちろんアナログ盤だった。インディーズだったこのアルバムが、メジャーで復刻(CD盤で発売)されたのはよかったと思う。より多くの人に聴いてもらえるからね。
自分がプロになったばかりで、右も左もわからないという状況で、誘われるままに入ったバンドだった。楽器だけを演奏していくとそういう風になりがちなんだけど、テクニック至上主義みたいな、とにかく楽器がうまくなければ認めない、というようなところが若い頃の僕にはあったんだよね。自分に対してはもちろん、他の人に対しても。とにかくうまい人とやりたかったんだと思う。ところがこのバンドに入ったらみんなアマチュアみたいなの。何なんだこれは?って思ったくらいだった。でもねそれは大きな間違い。すごいバンドだった。みんなで助け合って一つのものを作っていく、紡いでいくっていうやり方で、一人でもできない人がいるとできるまで付き合うという感じ。音楽を作っていく上でテクニックはすごく必要なものだけれど、テクニックをつけることが目的ではない。楽器って音楽を表現するためのツールであって、そのツールをいかに使って音楽を表現するかという事が重要なんだって。楽器を演奏するという事だけに意識が向いている人がミュージシャンには結構多いと思うんだけど、そうじゃなくて、もともとは自分の中の音楽を表現する為にやっているということをこのバンドで学んだ。自分の音楽とか生きていく上での価値観とか、そういった意味で大きなターニングポイントになった。
バンドは13年前に活動停止になってしまった。悲劇的なこと..ボーカルの江戸アケミが亡くなったんです。その後ベースのナベちゃんとサックスの篠田さんが相次いで亡くなった。その時はさすがにみんなで呪われているんじゃないかと本気で話した。自分も当事者の一人としてバンドの中で三人が相次いで亡くなるというのは本当にショックで、自分も死んじゃうんじゃないかな、次は誰だ?って。今年が江戸アケミの13回忌で"じゃがたらイベント"みたいなものがあって、じゃがたらにまつわる人たち、田口トモロヲ、近田春夫、大槻ケンヂ、町田康などが参加して、僕は"じゃがたら残党組"というくくりで出演した。でもすごく寂しかったのは、じゃがたらの元メンバーとして参加する人があまりいなかったんだよね。ミュージシャンを続けている人があまりいなかったり、東京にいる人があまりいなかったりっていうのがあって、結局ギタリストのOTOとダンサー・振付師の南流石、キーボードのエマーソン北村と僕とでやった。一時は大所帯のバンドだったんだけどね。
そんなこともあって久しぶりにじゃがたらを聴き直してみた。このアルバムのタイトルチューンの曲でトロンボーンのソロを僕が吹いているんだけど、いま聴いてもなかなかいいソロだな、と自画自賛できる感じだった(笑)。ギターのOTOが参謀官みたいな人で、詞はアケミが書くし、曲はわりとみんなで分担していたんだけどサウンドデザインはOTO がほとんどやっていた。加えて先見の目があってビデオを回していたんだよね。彼が記録を残すということを大事にしてやっていてくれたおかげで、貴重なビデオがじゃがたらにはいっぱいあってそれも見直してみた。14、15年前の自分の映像なんかがあって、笑っちゃうんだけどすごく楽しそうだったね。映像を残しておくのは必要だなと思った。
『じゃがたら』以降、ある意味メジャーデビューをしてしまうとそれなりにコマーシャルな部分に乗ったりする必要が出てくるので、みんなで作っていくという感触が少しずつ希薄になっていった。環境が整ってくるでしょ。事務所ができたりレコード会社のディレクターがいたりするから。でもこの作品は、渋谷の雑居ビルの中にあるアマチュアのレコーディングスタジオみたいな所で、徹夜で寝泊りしてみんなでやっていた。そういう事も今ではすごく懐かしい。音作りの原点という感じがする。
アケミは精神的な病にかかっていた時期があってそういうことがあったせいか、彼を直接知らない人達からは変な捉え方をされちゃうんだけど、とっても普通というか素直な人で、僕はじゃがたらっていうよりむしろ、江戸アケミの考え方とかメッセージというものにすごく影響を受けたところがある。いろいろな意味で。僕はメンバーの中では5、6歳年下なんです。考えてみたら彼らが亡くなったのは、今の僕よりも若い時なんですよ。良くも悪くも自分が年をとったんだなあとすごく思う。



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Sentimental Journey / Nils Landgren

スウェーデンのトロンボーンプレイヤーで、スウェーデンではとっても有名なミュージシャンです。僕はCDのコレクターだったりもするので、彼のことは10年ぐらい前から注目していたんだけど、アルバムはドイツで出ているものがほとんどで、日本盤がなかったせいかなかなか日本で紹介されなかった。今回このアルバムから日本のディストリビューションがつくことになって、やっといわゆる普通の国内盤として発売された。

なぜ僕が彼に注目しているのかというと、たとえば外資系のレコード店なんかで彼のコーナーのキャプションに「スウェーデンの村田陽一」って書いてあるのね。 (笑)そうすると日本のリスナーにもわかりやすいらしくて。何をもってスウェーデンの村田陽一と言われるのかというと、トロンボーン奏者でありながら、わりとフレキシブルにいろんな活動をしている。メインストリームのジャズみたいなこともやるし、ファンク、アヴァンギャルドもやる。いわゆるトロンボーン奏者のアルバムってわりと統一感があって、ジャズならジャズ、ラテンならラテン、というプレイヤーが多くて、こういうオールラウンドな人は珍しい。そういう彼の特徴を表現するのにわかりやすいんじゃないかな。

僕はトロンボーンを吹いてはいるけど、トロンボーンプレイヤーには意外と影響を受けてはいなくて、他の楽器の人にすごく影響を受けてきた。でも、今、自分と同じトロンボーン奏者として、彼の影響はすごく大きい気がする。楽器もすごくうまいけれど、それだけじゃなくて、自分の音楽を伝えるための道具としてきちんと使っている。そして、このアルバムでも歌っているんだけど、歌を歌うこととトロンボーンを演奏することが分け隔てなく普通に、まるでしゃべっているかのようにできる。トロンボーンも吹けるし歌も歌える。ある種の理想ですね。さまざまな表現手段をもっていて、俳優もやっているみたいですよ。奥さんがすごい有名な女優で、それが縁なのかな、ちょっと性格俳優みたいな感じで。でも、俳優はあまりやりたくないと言ってたけど(笑)。

僕が自分のソロをアトランタでレコーディングしたときに、ジェームス・ブラウンのバンドリーダーだったトロンボーンのフレッド・ウェズリーに参加してもらったんだけど、僕はその人と一緒にやりたいとかねてから思っていたんだよね。で、そのときに意気投合して、フレッドが「ワールド・ファンク・トロンボーン・カルテットをやろう」って言い出した。トロンボーン四人でファンクをやる、そういうのをやりたいねという話で、フレッドと僕と、ニューヨークのプレイヤーと、あとスウェーデンにニルス・ラングレンという人がいるから一緒にやろうって。と言いながらも、僕はそのときニルスとは直接は面識がなかった。でも、今回この日本盤に合わせて彼がプロモーション来日した際に、彼のレコード会社からゲスト出演というオファーがあった。で、スウェーデン大使館で演奏したんだけど、思っていた通りのすごいナイスな人。考え方も似ていて、彼にもその「ワールド・ファンク・トロンボーンカルテット」の話をしたら、やろうやろうって乗ってくれた。

ニルスには、会いたいと思っていて会えた。お互いのタイミング、引力みたいなのがあるんじゃないかな。どこかで繋がる、願いが叶う、という感じかな。具体的に、彼がスウェーデンに僕を招いてくれるという話もしてくれているし、彼にも僕のアルバムを聴いてもらったり、メールのやり取りなんかも含めて、すごくいい感じの付き合いが始まっている。そういう意味では、ミュージシャンをやっていてよかったなと思う、音楽という共通言語があるから。

ニルスは、「ワールド・ファンク・トロンボーン・カルテット」をスウェーデンでやれるようにするとか、いろいろ画策をしてくれてるみたい。いずれは音源になればいいなあと思うんだけど。そうしたら僕はスウェーデンで、「日本のニルス・ラングレン」って呼ばれるかもね(笑)。



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ケイト・ブッシュ・ストーリー / Kate Bush

ポンタさんがホストでやっていた「ずっと好きな歌」(BS FUJI)という番組で、遊佐未森さんがゲストアーティストだった時に、ケイト・ブッシュをトリビュートしたのね。僕は音楽監督をやっていたから、当然まず聴かなければならない。それまで名前は知ってたんだけどちゃんと聴いたことがなかったんだ。で、聴いてみたらすごく好きなタイプの曲だったり歌だったりした。「嵐が丘」も好きだし、「夢見る兵士」、「少年の瞳を持った男」も。これを聴くと遊佐未森さんが彼女のことをすごく好きだっていうのがよくわかるよね。僕にとってはすごく新鮮だったし、曲自体がアレンジも含めて一曲になっている(完成している)感じがしたから、いつもは崩して作り上げる、っていう感じのアレンジをする番組なんだけど、このときはわりとそのままでやったんだ。

遊佐さんがきっかけで聴き始めて、その後もよく聴いているし、ケイト・ブッシュの曲を自分のライブでも取りあげるようになった。特に「嵐が丘」や「夢見る兵士」なんかをクラシック・パーカッション、ウッド・ベース、トロンボーンっていう変わった編成のトリオでやっていて、そこではけっこう崩したアレンジでやってみたりしている。宣伝だけど、今度出る自分のソロアルバム(「ABSOLUTE TIMES」ビクター2003.7.23.リリース)でもその編成(高田みどりさん、坂井紅介氏)でやった「ラ・ムールはあなたのよう」が収録されてるので是非聴いてみて欲しいな。

番組(「ずっと好きな歌」)をやらせてもらったおかけで、普段は通り過ぎてしまいそうなジャンルやアーティストの曲に触れる機会が増えた。いいなと思ったものは、後から自分でCDを買いなおしたりした。最初はやらざるを得なくてやるわけでしょ、仕事だから。だけど、すごくラッキーなことが多かったね。ケイト・ブッシュは普段なら絶対に通ってなかったと思うんだ。でも、実際聴いてみると、遠いところではない、という感じの音作りだった。すごく好きな音楽が増えるのは本当にうれしいね。

まわりに聞くとケイト・ブッシュって、ちょっと飛んでいる人みたいね。ところが僕には、人が言うほど、この人が病的には見えないんだ。そういうことにちょっと鈍感なのか、病的とか言われるような人のことがそれほど変に思えなかったりする。もしかしたら、自分も同類で気がついていないだけなのかな(笑)。あの「じゃがたら」を本当に好きでやっていたくらいだから、実際そうなのかもしれないね。別にアケミさんも普通に思えたし(笑)。

僕は、ボーカリストは圧倒的に女性のほうが好き。男性でいいなと思う人がわりと少なくて、家のCDラックを見ると、やっぱり女の人のほうが多い。女の人って、年齢で声質がずいぶん変わるでしょ、それがおもしろい。デビューアルバムとそのずっと後では、ぜんぜん声が違う。年をとると基本的にキーは低くなるでしょ。でもたとえばフランク・シナトラなんかはぜんぜん変わらない。そういう意味でつまらないと言えばつまらないわけ。ボーカリストのアルバムを年代別に聴く楽しさは、その人がどれだけ成長していったかとか、おもしろくなっていくとかの変化が顕著にわかるというところにあるからね。

このアルバムを聴いてみて、リズムトラックの作り方や録り方もすごくいいと思った、そのセンスがね。プログレッシヴな部分もあるんだけど、それがぜんぜんいやらしくないんだ。これはベスト盤で86年の曲までしか収録されていないけど、その後の年齢を重ねたケイト・ブッシュの声も聴いてみたいと思う。



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That's the Way I Feel Now: A Tribute to Thelonious Monk / various artists

いわゆる世間で言うところのセロニアス・モンクをトリビュートした、コンピレーション・アルバム。ハル・ウィナーという人が、トータルのプロデュースをしていて、曲ごとにいろんなミュージシャンがセッションをして、ジャズ・ピアニスト、セロニアス・モンクの曲を演奏するというもの。この人は、この後にも何枚かこういうコンピレーションとかトリビュートものを作っている。たとえばディズニー・トリビュート。それにはスティングが入っていたりして、「この人どういう人脈?」みたいなキャスティングをしている。ハル・ウィナー自身の顔は出てこないんだけど、すごくセンスのいい人だっていうのがわかるね。後になってくると彼自身も演奏していたりするんだけど、このアルバムはまるっきりのプロデューサーとしてやっている。

実は一度、彼の仕事をしたことをあるんだ。それは、トランペットの三宅純さんが作ったCM音楽かなんかをハル・ウィナーが聴いて気に入ったみたいで、彼のプロデュースで三宅さんの作品を作ったときに呼ばれて吹いたんだよね。三宅純さんの作る音楽はボーダレスですごくいいものがあって、僕はよく呼ばれて行くんだけど、彼は日本には数少ない、真の優秀なミュージシャン、アーティストだと思う。

今、思い出したけど、このアルバムをそもそも一番初めに聴いたのが、じゃがたらの江戸アケミが亡くなる数ヶ月前だった。元々、モンクの「リフレクション」という曲がすごく好きだったというのもあったんだけど、彼が亡くなって自分なりに考えるところがあった。で、新宿のピットインでまだ朝の部をやっていたころ、お葬式の前日かな、自分のバンドのライブがあったのでこの曲を演奏したんだ。

でも、このアルバムを買った当時は、僕はハル・ウィナーをよく知っていたわけでもなく、なんでこのCDを買ったんだろう?・・・そう、ドナルド・フェイゲンが好きだったんだ。で、ドナルド・フェイゲンが他の人のアルバムでやることってあまりないでしょ。それが入っているから買ってみたら他の部分でも興味深いところがあった。とにかくスティーブ・カーンとドナルド・フェイゲンがやっている「リフレクション」(3曲目)がすごく好きで、今でもこの曲はよく演奏する。他にもラインナップがおもしろくて、ドクター・ジョンの曲(4曲目)が入っていたり、スティーブ・レイシー、チャーリー・ラウズというジャズの有名な人の曲(5曲目)とか、ギターが3人いたりする(6曲目)のとか、フレンチ・ホルンをいっぱい使っている曲(7曲目)とか、トッド・ラングレン(10曲目)、ジョー・ジャクソン(11曲目)、ランディ・ウェストンというジャズの人(14曲目)、カーラ・ブレイ(15曲目)等々・・・とにかく妙な組合せのゲストがいっぱい入っていてキャスティングの意外性が実におもしろい。

ただ結論としては、セロニアス・モンクはどうやってもセロニアス・モンクなんだってことになってしまうかな。いろいろな人がカバーをして、いろいろ奇をてらったアレンジをしたりしても、結局はセロニアス・モンクの曲の色が前に出てくる。彼のすごさはそこで、誰がどんなアレンジをしても、曲の強さに引っ張られてしまうところだと思う。アレンジしがいがない、というか、どうしようもない。だから曲をいじるというよりは、変わった編成でやるしかないのかな。ギターが三人いたり、フレンチ・ホルンをたくさん使ったり、トッド・ラングレンが打ち込みだったりね。まぁ、このアルバムを聴いて、普段セロニアス・モンクをあまり聴かない人が興味を持ってくれたら、それで作品としては成功なんだと思うけどね。




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WIDE ANGLES / MICHAEL BRECKER

このアルバムの主役は一見マイケルのように見えるが実はプロデューサーとして名を列ねているギルゴールドスタイン(G.G)だと思う。
今回のこの野心的な編成でのレコーディングはどういう経緯で決まったかは知るところではないが、もっともG.Gが得意とする編成であることは間違いない。
必要最小限の人数で効果的なサウンドを出すという手法(ジャズアンサンブルではあまり使われないオーボエ、ホルン、ストリングスカルテットを起用)はギルエバンス(G.E)譲りのものである。
実際G.GはG.Eの参謀的な立場でG.Eオーケストラに参加していたし G.E死後、G.Eオーケストラのメンバー達を集めゼブラオーケストラという非常にG.Eライクなオーケストラでライブをやっていた。
私がNYに滞在中、彼から誘われてそのオーケストラに参加する機会があったのだが、その時には今回参加の超新人アレックスがいた。
G.Gのハーモニーセンスは非常にG.Eの影響下ではあるがビートのセンスはR&B的なものもあり、過去の手法をそのまま周到しているわけではない。
マイケルは今までにも大編成との共演があるが、今回のアルバムはそれまでのものとは大きく違っている。
それは今までのものは、あくまでオーケストラがバックグラウンドでソリストが大きくそのオーケストラに影響されることがなかったのだが、今回はマイケルとアンサンブルが見事に相互、影響しあっている。
これはG.Gがピアノをあまり弾かず今回はコンダクティングに専念したためだと断言できる。
アンサンブルがこれほど「うねる」のは個々のプレイヤーとしての演奏技量、音楽性はもちろんとして、それ以上にG.Gの適格なコンダクティングのおかげだと思う。
これだけ、ち密なアレンジで、この編成ではどうしても「予定調和」を余儀無くされてしまいがちなのだが、非常に「段取り」が感じられない程、マイケルとアンサンブルのバランスがいい。



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One 4 J: Paying Homage To J.J. Johnson / Steve Turre

NY在住のトロンボーン奏者、Steve Turreのアルバム。タイトルを見て察する通り、ジャズトロンボーンのバーチオーソ「J.J.Johnson」へのオマージュのアルバムである。11曲中8曲がJ.Jのオリジナル楽曲であり、そのオリジナルの雰囲気を損なうことなく、Steveと朋友RobimEubanksの新たなアレンジが施されている。編成もリズムセクション+トロンボーンアンサンブルでトロンボーンサウンドの醍醐味が十二分に堪能出来る。これら楽曲を通して聞くとJ.Jが作曲家として、編曲家として希有な才能の持ち主だったことがわかる。


今回のアルバムは曲によってトロンボーンの編成が多少違っていて2トロンボーンのものもあれば5トロンボーンの曲もある。参加している他のトロンボーン奏者は、RobinEubanks(DaveHoland バンドなどに参加) ,JoeAless(NYフィル主席奏者),Steve Davis(ChickCorea オリジン),Andre Hayward,Douglas Purvianceの4名。

この人選は非常にSteveらしい。いわゆるテクニカルなスムース系ではなく、個々が非常に個性的なごつごつした奏者を集めている。もともとJ.Jも非常に個性的だった奏者であったが、彼のスタイルがジャズトロンボーン界において非常に革新的で且つスタイリッシュだったために、その後に続く奏者がみな影響をうけたため一瞬、J.Jのサウンドがずっと昔からあるトラディショナルなスタイルだと思われがちである。事実、それ以前のいわゆるダンス音楽が全盛の頃のビブラートをたっぷりかけたスイートなスタイル、もしくはデキシーに見られるスライドによるグリッサンンドを多用したスタイルとは圧倒的に違う。


J.Jは非常にイノベーターであったわけだが、この精神を見事に受け継いでいるのはこのSteveが一番だろう。Slide Hamptonという演奏スタイルが非常にJ.Jに似たベテラン奏者がいるが彼は精神的にはあまりJ.Jの影響を受けていないように感じる。以前、 Steveと話している時に非常に彼の音楽感の根幹にあるものとして「アイデンティティ」への意識を強く感じた。彼のトレードマークになっている法螺の演奏は自分がメキシカンであることの一つの拠り所であると言っていた。

今回のようなトロンボーンアンサンブルが全面にでている、しかもコンセプトのハッキリしているものはとかく企画先行で中身が寂しいといったことがたぶんにあるがこのアルバムはそんなことが微塵もなく非常に彼等のJ.Jに対する敬意と新しいものをクリエイトするという創作意欲の「清さ」を感じ取れる素晴らしいアルバムだ。これを聞いて何かを感じたら是非、オリジナルのJ.J による演奏も聞いてみて欲しい。そんな自分もしっかり「J.J. チルドレン」だ。




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2008年03月26日

The Legendary Joao Gilbert / Joao Gilberto

御存じボサノバの創始者のひとりであるジョアンジルベルト。

数年前に彼の初来日コンサートに行ってきた。ボサノバサウンド自体は巷でなじみがあるものの彼の存在、認知度においては非常に日本人の意識下のおいては低いものだと思ったのだが、実際国際フォーラムなどの大ホールでの4本のコンサートが統べてソールドアウトという状態。これには吃驚。その客の何割が彼の凄さがちゃんとわかるだろうか?という自称「ジョアン フリーク」としてのごう慢さを持っていたのだが、実際、彼のナマを見て終演後立ち上がれない程の感動。どうやら観客すべてがその模様。それだけ凄かったのです。具体的な彼に関するデータがなくてもこのライブを見て何も感じない人などいるわけないというほど凄かったのです。なにが凄いかというと、いわゆる彼はギター弾き語りという形、つまり大きなステージには72歳の初老男のみなわけだが、その彼が紡いでいく音楽は何十人のオーケストラの演奏以上に大きなホールを包み込む力を持っているのです。彼は、決して力むことなくいい意味で脱力していて二時間以上ただひたすら唄い続けたのです。今回のコンサートでも彼の事情で開演が一時間程遅れたりしたわけだが、こんな彼の姿が見れるのなら、それくらいのことは幾らでも我慢出来る。

その証拠にコンサート終了後の客の表情はいたって「癒し」「幸福感」が現れていた。(もちろん自分も)最近、こんな「幸福感」って味わってないなとふと思いました。それとともにギターを抱えて舞台の袖に戻っていく彼の後ろ姿を見て思わず、「こうなりたい」と思いました。彼の演奏は決して「パフォーマンス」ではなく「日常」の一部分を見せられた感がありました。

そんな彼が1958〜1961年のレコーディングしたアルバムがこれです。曲によってオーケストラがバックだったりしますが、基本的に彼の弾き語りの形が核になっていることには間違いありません。収録されている曲は今となってはボサノバのスタンダードになっている曲がめじろ押しです。それだけ、その時から彼の影響力が伺えます。

こちらもお薦め。


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Amoroso(イマージュの部屋) / Joao Gilberto

ボサノバの創始者、ジョアンジルベルトの1977年の作品。基本的にギター弾き語りの彼であるが、この作品は弾き語りに大編成のオーケストラをバックにしたものである。レコーディングにおけるバランス、アレンジのよるところも大きいものの、聞き終わった後、オーケストラのゴージャスさはもちろん印象に残るがそれ以上にジョアン本人の声、ギターがもっとも印象に残る。

オーケストラであってもたった一人の演奏であっても、常にそこには「ジョアン」そのものである。彼の元妻であるミウシャさん(その前の妻はアストラッドジルベルト)から聞くところによるとかなりジョアンは頑固者らしく、コンサートを土壇場でキャンセルしたり開演が遅れたり(実際、今回の来日コンサートでも1時間程毎回開演が遅れた)、知らず知らずの周りが彼のペースに飲み込まれてしまうみたいだ。

サックプレイヤーであるスタンゲッツとのコラボレートで作られたアルバム『ゲッツ/ジルベルト』(このアルバム発売によりボサノバがワールドワイドな知名度を持つことになる、歴史的な名盤)のレコーディングではジョアンがゲッツに音楽的な面でくってかかったのを盟友であるアントニオカルロスジョビンが仲裁に入った話は有名。でも、その彼の音楽にたいするこだわり、執着心が彼特有のサウンドを構築していると思う。ミウシャさんの話しによれば、ある曲の中の一ケ所のコードだけを一日中考えていたそうです。かなりの粘着気質。

そんな彼がこのアルバムでは彼の希望かはたまたプロデューサーの意向なのか確かではないが、いわゆるブラジルのレパートリーからではなく、ジャズのスタンダードだったり、イタリアの曲などを取り上げている。それが見事にあたかもジョアンのために書かれたオリジナル曲のように座りのいいものになっている。特に「エスターテ」「ベサメムーチョ」等はこれぞ「ジョアン」という仕上がりになっている。もっとも、オーケストラアレンジを担当したクラウズオガーマンがいてこそではある。

とにかくむずかしいこと考えず、癒されたいひとには絶好のアイテムである。
僕もこれで何度も救われています。


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Thieves and Poets / John McLaughlin

ジャズギタリスト「ジョンマクラフリン」の作品。この作品は大きく分けて2タイプのセッションから成立している。

クラシックオーケストラのバックの曲とギターアンサンブル「Aighetta Quartet」との共演で、前者がマクラフリンのオリジナル曲、後者がジャズスタンダード曲を演奏している。この2パターンのサウンドのキャラクターは異なるが全編のアコースティックギターの独特な節回しがアルバム全体の統一感を保っている。マクラフリンが最初に演奏した楽器はピアノだったそうで、今回のスタンダードの4曲は各曲ごとにタイプの違う4人のジャズピアニストにデディケイトする意味で演奏した。その4人とは、Bill Evans,Herbie Hancock,Chick Corea,Gonzalo Rubalcaba。この4人から音楽的な影響を受けたようだ。それをあえてピアノを入れないギターアンサンブルで演奏するところに彼のギタリストとしての志の高さ、プライドを感じる。

オーケストラバックのオリジナル曲は演奏時間の長さからも判断できるように非常に気合いの入った壮大且つ意欲的な作品となっている。マクラフリンとオーケストラがきちんと融合し一体化している。ここで使われるハーモニーがいかにもヨーロッパ的で非常に私の好みだった。全体を通して非常に意欲的な作品ではあるが、質感が柔らかいのでリスナーを選ばないポップな音作りになっている。聴くものによってはそれが、「癒し系」だったり「クラシックぽい」「ジャズ」だったりする。それは自分のアルバムを作る上での価値観と同じだ。



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Canto / Gino Vannelli

隠れ「ジノ」ファンとしては非常に嬉しい久々のアルバム。今回は、これまた今までのものとは趣の異なったフォーマットでのアルバムだ。オーケストラバックで曲によっては「イタリア語」「スペイン語」で唄っている。一見、ここのところ最近はやりのクラシカルな企画ものと間違われそうだがそんな安直な発想でないことが、この「音」を聴けばすぐ分かる。

今までの作品を通して彼の完璧主義な性格が見て取れるが今回もこの「カンツォーネ」的なサウンド作りにも垣間見えた。曲によって言語を変えたのはその曲の持つメロディがより良く響くためにそうしたのだと思う。蛇足だがボサノバがポルトガル語のもつ響きで成立しているのもそういった理由だと思う。(ボサノバを英語で唄うと、ボサ特有のやわらかい感じがなくなったりする)

今回のアルバムを通してジノとバックオーケストラとの一体化が素晴らしい。それは全曲通して、彼がオーケストラのオーケストレーションをやっているのも非常に大きな一因だと思う。私にとって彼のアルバムが好きな理由はもちろん、彼の素晴らしい歌もあるが、それ以上に入念に構築され、且つともすれば演出過多のドラマティックな展開をもつバックトラック作りが最大の魅力だ。この「大袈裟感」はちょっと比類ないものだと思う。





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